ボボ人形実験から見る幼児の暴力性。
私たち親はどうするべきかを考える。
最初に……
戦隊モノのテレビ番組の製作に携わっている全ての方に謝罪致します。
今回は、
メディアの暴力シーンが幼児の攻撃性に影響するのかというお話ですが、
謝るということはつまりそういう事です。
(絶妙に腹立つ顔)
それまで人は、
自分が経験した事からでしか学習できない
と考えられていましたが、
今では他者の行動を観察するだけでも学習しているという事が分かっています。
今回は、偉大な心理学者、アルバート・バンデューラ氏の
「モデリング理論」「ボボ人形実験の結果」を中心に
幼児の攻撃性について調べてみました。
ボボ人形実験とは?
心理学者バンデューラはある仮説を立てました。
人は他者の行動を見るだけで学習できるのではないか?
ボボ人形実験誕生の瞬間。
以下、実験の内容です↓
(できれば読んで欲しいけどめんどい人は結果のみでもOK!まぁできれば読んで欲しいんですけど)
3~5歳の幼児72名(男女36名ずつ)を対象に、
ボボ人形というゴム風船人形を使った実験を行いました。
ちなみにこのボボ人形、ピエロの顔してて妙に人間の不安を煽ってくる顔面してます(なんでこれを選んだ?)
そして幼児をA・B・C3つのグループに分けます。
ボボ人形に激しい暴力を振るっている映像を見せる
ボボ人形を無視し他のおもちゃで普通に遊んでいる映像を見せる
YouTube動画見たらこのAグループのボボ人形への暴力が、想像より5倍激しくてトラウマになったわ
その後、幼児たちを同じようにボボ人形や他のおもちゃがある部屋に入れ、
ABCそれぞれのグループの行動を観察しました。
実験結果
幼児はモデルの行動を模倣することが判明
YouTubeより↓
私がこの子の親なら確実にバンデューラにクレーム入れる
ウチの子になんてもん見せてくれたんやと。
また結果から、自分と同性のモデルを模倣しやすいということも分かったそうです。
そういえば我が息子も夫の真似ばかりしているな。
ちなみに長くなるので割愛しますが、ボボ人形実験は他にもあるので興味のある方は是非調べてみてください。(同様の結果)
メディアの暴力シーンが与える幼児への影響とは
別のボボ人形実験によると、
・生身の人間の暴力シーン
・映像内の人間の暴力シーン
・アニメなどのキャラの暴力シーン
など異なるケースに関わらず、幼児の攻撃性に影響を及ぼしたそうです。
また、
https://core.ac.uk/download/pdf/35274954.pdf
こちらの論文によれば、
バンデューラの行ったボボ人形実験よりもより普段のテレビ鑑賞に近い環境で、同じように攻撃性を測る実験を行った結果、
やはり、攻撃シーンのある番組(戦隊ものに近いストーリーのオリジナル映像)を見たグループが、
そうでないグループに比べ、その後の自由遊び時間に攻撃性を見せた。
つまり、
※その際、一緒にテレビを見ている大人がメディアの攻撃行動に対して肯定的な言葉を掛けることで(無関心も同様)幼児の攻撃性は一層増した
たとえ成人でも、暴力映像から正常な感覚を歪められたり、麻痺させられる事がある。
ましてや現実と非現実の境界が曖昧な幼児ともなるとその影響は計り知れないという事です。
攻撃性の獲得をも遅らせる事に繋がる
2歳児よりも3歳児、3歳児よりも4歳児、からの5歳児と、攻撃性への模倣行動は上がっていくようですが、
5歳をピークにその後は増加しないという結果も出ています。
「戦隊モノを見せない」は本質ではない
とはいえ、戦隊ものおよび鬼滅の刃が悪いと言っているわけではありません。
ちなみに鬼滅はアメリカでは17歳以下は保護者と一緒じゃないと見られず、日本でも12歳以下の子に見せる場合は保護者の助言(指導)が必要なようです。
見せないことが解決になるとは思っていません。
なぜならその後の人生においても映画や漫画、ドラマなどちょっとしたものから大層なものまで
暴力シーンはそこら中に溢れ返っているからです。
それらを全て遮断するのは不可能であり、そもそも過剰だと考えます
戦隊ものを見て育った大人が全員暴力的なわけじゃないだろいい加減にしろ
誤解して欲しくないのは、戦隊モノを見ることで将来という長いスパンにおいて暴力的な人間になるというデータはないということです。(少なくとも私は見つけられませんでした)
昔「アンパンマンのアンパンチのせいで子供が暴力的になる」という
モンペのお手本のようなとんでもクレームがあったようですが、
アンパンマンであれ何であれ、全てをメディアの責任にしてしまうのは親としてあまりにも無責任です。
やなせたかし先生に謝ってよ
しかし同時に、メディア(アニメ漫画含む)の暴力への悪影響は全くない
というのもまた、不自然ではないでしょうか。
スポーツ漫画に憧れてスポーツ始める、
バンド漫画に憧れてバンド組む、
グルメ漫画に影響されて料理する、
ブラックジャックに憧れて医者になる
これらと同じように、かつてビーバップハイスクールという絶大な人気を誇ったヤンキー漫画がありましが、
それに憧れてヤンキーになった若者が大勢いたことも事実で、
漫画内で描かれた特殊警棒は売り切れになるほどだったようです。
何を隠そう私も魔法使いサリーちゃんのバレエシーンに憧れて3歳からバレエを始めた一人です。
全ての物事には例外と個人差があるので、
幼児であれ成人であれ、メディアだけが要因というわけではなく、
そこにはもともと持つ個人の特性・親との愛着関係・生育環境・あるいは外的なものが絡み合って結果が決まるのだと思います。
ボボ人形実験以降、これに対しての研究結果がせめぎあっています。
いくつもの研究結果や論文、
実際に過去に事件も起きていることから考えると、無視できないのではないでしょうか。
【結論】私たちは我が子に対してどうするべきか
ボボ人形実験のひとつに、
映像による暴力シーンを見た子供でも、
暴力に対して大人が否定的な言葉をかければ子供は模倣しない
という結果があります。
つまり、暴力シーンを見た時には親である私たちが
これはいけない事だ。こんな事をするなんて最低だ。
とその都度伝えることが、その後の幼児の攻撃性に対する抑止になるそうです。
また子供がたとえ遊びであってもお友達に暴力を振るった際には、
もぉ~だめだよ。
など軽い感じではなく、きちんと叱るということが大事になってきます。
その際暴力(暴言)を使って叱る事だけはやめましょう。
基本的に子供は2回3回言ったくらいじゃやめてくれないので
100回注意するのが当たり前!な心持ちで根気強く!!
そして、
暴力という手段を用いて問題を解決しているからではない
ヒーローがかっこよく見える要因。
そこにはヒーローがヒーローとなった背景・仲間・友情・誰かを守る気持ち・自己犠牲……
あと映像のプロ集団によって計算されつくした光と音と決めポーズの演出
など様々な要因が合わさってかっこよく見えているのであって、
「暴力的な強さがかっこいい」
わけではない。
しかしヤンキー漫画しかり、バトル漫画しかり、戦隊モノしかり、
創作物である以上作品を魅力的に見せる為に暴力をあえてかっこよく描いている。
フィクションとして楽しむのは良いけど現実ではこんな方法は取ってはいけない。
という事を子供に伝えておきさえすれば、悪影響はそこまでないのではと個人的には思います。
ただ、そんな理屈をきちんと理解できる年齢になるまで、一体何年かかるのでしょうか……。
そこは我が子の理解度に合わせて親が地道に言い聞かせて行くことなのかなしかないのかなと。
男児は女児よりも暴力傾向にある?
ボボ人形実験でも、暴力を見せられた幼児は
男児・女児に関わらず両方ともに攻撃性が見られましたが、
その割合は、男児のほうが多かった!
一般的に男の子は女の子よりも暴力的だという認識がありますが、
これは性差によるものというよりも、
無意識の内に大人が行っている養育態度に原因があると言われています。
男児が戦闘シーンを真似たり、暴力的な遊び(行動)をした際、
それこそが男らしさ!!
……と、無意識のうちに社会から肯定されてしまうことに原因があるそう。
攻撃的な行動をする子どもの親は、子どもの攻撃的な行動を助長する傾向があると報告されているが、本実験からもそのような傾向がみられる
更に別の論文でも……
子どもの攻撃行動に対して親がおおらかであると、その子はずっと攻撃的であり続けるということも見出されている。
引用:幼児の攻撃行動と愛着・母親の養育行動との関連
つまり、親が攻撃的な言動を見せていたり、
攻撃性を助長するような態度(男の子だから仕方ない・喧嘩に負けるなんて男らしくないなど)
を取っていると攻撃性は増すという事です。
これについてはとある本を読んだので別でシェアします
まとめ
あえて断言すると、
メディア(漫画含む)の暴力シーンが幼児の攻撃性を高めることはある
と私は思います。
絵本やアニメがきっかけでスポーツを始めたり、音楽を始める人がいる中で
メディアから良い影響は受けるけど悪い影響は受けない
……なんてそんな都合の良いことはないと思うからです。
戦いごっこが好きな子同士でやり合う分には問題ないですが、
園やクラスにはそうじゃない子だっています。
そうして本人の悪気無く暴力へのハードルが下がることで、遊びの延長で他の子を傷つけてしまったり、
トラブルに発展してしまうことも子供の世界ではよくある事です。
仮にそれが原因で孤立してしまう事になれば、可哀想なのは加害者となってしまった男の子も同じですよね……。
私が夫にこの話をすると、
戦隊モノも戦いごっこも昔からあるし気にしない、別に女子に嫌われるくらいやからええやろ
と彼は言いましたが、あぁ、めちゃくちゃ男児側の意見だなと思いました。
そうです。昔からあるのです。
かつて女児だった私は、悪気無く暴力を遊びの延長で使ってくる男の子にみぞおちを殴られて吐きそうなくらい痛い思いをしたこともあるし、
また別の子には下校中にうっかり目を傷つけられて出血したこともあります。
小学校入学したての時は隣の席の男の子に鉛筆の芯で腕を刺されそうになったこともありました。(先生が気付いて止めてくれた)
文章にすると治安悪すぎてワロタ(ド田舎公立マンモス小学校)
※普通の学校です
どれも嫌がらせやいじめなどでは全くなく、相手からすれば楽しい遊びの範囲でした。
でも私は「やめて」と言えない女児だったんですよね……。
彼らがみんな戦隊ものを見ていたかどうかは定かではありませんが、
暴力へのハードルが著しく低かったことは確かではないでしょうか。
私は息子に彼らと同じことをしてほしくないので、
暴力シーンを目の当たりにした際にはその都度否定し、
同時に
暴力で解決することはリアルではないし、遊びであってもいけない事
だというのをしっかり教えていきたいと思います。
性教育でさえ幼児から始めるのが当たり前になってきている昨今、暴力の危険性を教えるのに早すぎることはなのではないのかなと。
そういえば小学生の頃、スラムダンクにハマった兄に、ひたすら庶民シュートの練習させられたのもしんどかったなぁ……(遠い目)
教育の取捨選択はそれぞれの家庭によって違うので、
「我が家は別に気にしない」「うちの子は戦隊モノ見てるけど暴力的な遊びはしない」
という事なら全然OKだと思います。
ただ似たようなことで悩んでいる方だったり、そうではないけど子供の為に何か考えるきっかけになれれば嬉しいです。
【参考文献】
・テレビの攻撃的モデルと幼児の攻撃行動―モデルへの社会的効果の強化―
・攻撃的行動の獲得機序に関す る研究
・幼児の攻撃行動と愛着・母親の養育行動との関連
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